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ヒビノココロミ

日々、いろいろ試して、いろいろ言うブログ。

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<span itemprop="headline">晩秋の文房具屋めぐり その3</span>

僕は、商店街や学校の近くに来ると決まって探す場所がある。

そう、文房具屋だ。

こういうところには十中八九、文房具屋があるのだ。

僕は、視線を少し上に上げて歩いた。

文房具屋を探すときは、まず、文具メーカーの看板を探す。

コクヨが一番多い。あとは、ゼブラとか、三菱鉛筆とかいろいろ。

僕は、あの看板を見るとわくわくする。

文房具屋は、小さい頃の僕にとって、おもちゃ屋みたいなところだった。

普通におもちゃを買うよりも、面白くてかっこいいものが安く手に入る。

僕は、駄菓子屋に行きたがる友達を無理やり文房具屋に連れて行った。

友達は、練りけしとか、キャラ物の鉛筆とか買っていた。

でも、僕はちょっと背伸びをして、そういうのは買わなかった。

僕にはそういうのを買うのが、子供ながらに、子供っぽく思えた。

だから僕は、100円ぐらいのシャーペンや、ボールペンをよく買っていた。

あの頃の僕には、シャーペンの安っぽいプラスチックの軸がとってもきれいに見えた。

あの頃の僕には、ボールペンの銀色に光るペン先がとってもかっこよく見えた。

「それ、前に買っていなかったぁ?いくつ買うの?」

友達によく言われたものだ。

ま、それは今もあまり変わらないのだけど。

そんなことを考えて歩いていると、小さなビルの一階に、ちょっと変わったお店を見つけた。

錆びたガラス戸にぶら下げられた、きっと、どこかの国のキャラクター。

何だろう、この雰囲気。明らかにほかの店とは違う。

でも、奥のほうにノートとか鉛筆とかが見える。

これは、たぶん文房具屋。

だけど、これは僕の知っている文房具屋じゃない。

あの頃友達と行った文房具屋じゃない。

でも文房具屋なら、きっと面白い何かがあるはず。

入ろうと思ったそのとき、ふと、さっき買った缶ジュースの存在に気づく。

ちゃぷちゃぷと缶を振ってみると、まだ3分の2ぐらい入っているのがわかる。

見た感じ、狭そうなお店だからコレを持ったままじゃ無理。

この缶をどうにかしなきゃ。

なんで、蓋のできない缶ジュースを買ったのか。

もう、こんなの飲めない。

でも、捨てるのも惜しい。

でも、飲めない。

でも、早く飲まないと炭酸が抜けてまずくなる。

うう…

僕は、覚悟を決めてその毒々しいあかむらさき色の缶を一気に飲み干した。

ぐへっ。

さっきまで懐かしく思えた味が、ひどくまずく思えた。

僕は缶をゴミ箱に捨てると、そっとその店に入ってみた。