Xperia 5 iiiは、ソニーのフラグシップ・スマートフォンシリーズの中で小型版ハイエンドという位置づけです。本レビューで扱うのは第3世代ですが、2022/10/30時点での最新世代はXperia 5 ⅳとなります。なぜあえて、5 iii を扱うのかといえば、過剰なまでに詰め込まれたカメラ周りの光学機構があるからです。
最近のスマートフォンは、カメラが本体に不釣り合いなほど大きく違和感をおぼえることが多いですが、Xperiaは比較的おとなしいデザインと出っ張りで収めています。
でもこの中に、換算で
16mm(超広角):有効画素数約1220万画素/F値2.2
24mm(広角):有効画素数約1220万画素/F値1.7
70mm・105mm(望遠):有効画素数約1220万画素/F値2.3・2.8
のレンズを搭載してるんですよね。すごい。特に望遠の70mmと105mmは『ペリスコープ』という機構で、性能を維持しつつレンズをコンパクトに収めることに成功。しかもスマホ内部でレンズを前後させることで1つのレンズで2つの焦点距離を実現しています。
この変態チックな機構は次世代のXperia 5 ⅳで省かれてしまい、少々物足りないところです。
なお、レンズはZEISS T*なので、描写性能に妥協はありません。センサーサイズは24mmのレンズは1/1.7型で、最新スマホの中では突出したものではないですが、十分に大きなものです。
手に持った感じでは本当にコンパクトで、これでいて上位機種の1シリーズとほぼ同等のカメラ性能というのは”凝縮感”があってとても良いものです。(約68mm×約157mm×約8.2mm)
本機種に限らず、Xperiaは伝統的に「物理シャッターキー」を搭載しています。画像だと一番手前ですね。このキーを長押しすることで、どんな場面でも即座にカメラを起動できます。そして、本物のカメラよろしく半押しでフォーカス、全押しでシャッターを切る事ができるんです。これがもうね、コンデジっぽいフィーリングでいいんですよ。
で、起動するカメラアプリですが『Photography Pro』という純正アプリで、これがもうまんま、デジカメの操作体系なんですよ。カメラ触ったことある人は、「ああ、ここも調整できるのか!」とワクワクするはずです。
カメラ使ったことない人には全然優しくないアプリですが、モード選択ができるんですよね。
BASIC(ベーシックモード)
カメラアプリと同様のUIで、簡単に写真撮影できます。BASICモードの詳細な利用方法はこちら。
Auto(オートモード)
シーンに合わせた最適な設定をカメラが自動で判断。カメラまかせで簡単に撮影できます。
P(プログラムオートモード)
シャッター速度とISO感度の組み合わせを自動で行います。
S(シャッタースピード優先モード)
シャッタースピードを撮影者が決めて、ISO感度はカメラが自動で調整し、設定露出にするモードです。
シャッタースピードが速いと、動いている被写体を動きが止まったように撮影でき、シャッタースピードが遅いと、動感のある写真を撮影できます。M(マニュアル露出モード)
シャッター速度、ISO感度をマニュアルで調整するモードです。
Auto/P/Sモードではカメラが最適な露出(画像の明るさ)を決めるのに対して、Mモードでは撮影者が露出の設定を決定します。ISO感度とシャッター速度の両方を自分で細かくコントロールしたいときや、花火や星空などの特殊な被写体を撮る際に使用します。MR(メモリーリコールモード)
事前に設定した撮影設定を呼び出すことができるモードです。撮影前に設定する手間が省けて、お気に入りの設定ですぐに撮影できます。
スマホカメラでシャッタースピードとかISO感度いじれるなんてすごいですよね。あとこれで可変絞りだったら言うことないですね。
(なお上位機種には搭載されています!)
以下、作例をどうぞ。
16mm超広角
超広角レンズにより誇張されたダイナミックな構図は、インパクト十分です。
制限された空間でより広く撮りたい場合や、対象の大きさを誇張したいときに有効に感じます。キリッと描写されます。
24mm広角
本機種のメインカメラというべき24mm。一番センサーが大きいので多少暗い場所でもしっかり描写できます。(一番はじめの苔の画像は意図的に露出を下げています)
薄暗い室内でも明暗差がきちんと描写できていますし、結構寄れるので、背景をぼかして桜を撮ることもできました。
70mm望遠
個人的に一番多用する70mm。手元のものでも、ある程度奥行きを感じつつ、光学的にぼかす事ができるので好きなんですよね。いちばん『カメラっぽく』撮れるレンズの気がします。
105mm超望遠
105mmは、遠くのものを撮るのに有効です。デジタルズームにはない細やかな描写ができます。あと、強い光学的なボケを表現できるので奥行きを強調したいときに有効です。
(もっと作例見たい方のために、画像だけの記事を用意しました。↓)
冒頭からずっと『カメラ風味』とか言っていたのは、光学性能、操作体系に限った話ではありません。今までの作例を見ていただくと「スマホの写真にしてはおとなしいね」という印象を持たれた方も多いと思います。そこなんです。Xperiaのカメラは、画像の補正が弱いというかおとなしめなんですよね。それはつまり、カメラらしい描画になるということで、じっさいSONYのカメラと同じ画像補正チューニングが行われているとのことです。ど派手な極彩色のほうがSNSで『映える』のかどうかは知りませんが、それがなんとなく合わない人にはXperiaがおすすめです。
とくに、"スマホっぽい"写真となる要因にHDRがありますが、これもXperia 5 iii では『Dレンジオプティマイザー』が使えて、明暗差の大きいシーンでも変に誇張されず撮ることができます。
もちろん、他の追随を許さない圧倒的な万能カメラかといえばそうではなく、そこには『カメラらしい小難しさ』がつきまといます。前段では『カメラらしい控えめな補正』を褒めていましたが、そこが仇となり、例えば夜景の撮影は他のハイエンドスマホと比べて圧倒的に苦手です。ぶれたり暗く撮れたりする事が多い印象ですが、ここも「まああ、普通のカメラだったら三脚立てて撮るよなぁ、ましてやコンデジで夜景撮るなんて…」という思考になれば納得できます。他のスマホがちょっとすごすぎるんです。
スマホのカメラでも、ついつい色々な項目を調整したくなっちゃうような、日常的にカメラを使用して楽しんでいる方なら、きっと楽しめるスマートフォンだと思います。より上位の1シリーズやProシリーズも良いですが、『コンデジ感覚』でお使いになるなら、コンパクトな5 iii が一番良いと、私は思いますよ。