ちょっとカメラを触っていると、そのうち「自分でカメラをあやつりたい」という欲望が出てくるのは、ごく自然なことだと思います。この「オートからの脱却」という欲望、しかしながら自身の腕には自信がない、というジレンマは誰しもが通る道です。スマートフォンから、あるいは普及帯のコンパクトからのステップアップをはかる、私達のような"駆け出しカメラユーザー"の選択肢として、FUJIFILMのX70は非常に魅力的であり、最適解だと今回の撮影で実感できました。
コンパクトなボディに上位機種と遜色ない性能をそのまま詰め込んだX70は、「気軽に高画質を持ち出す」というのを体現した、まさに街歩きにうってつけのカメラと言えるでしょう。ともすれば、RICOHのGRと比較されがちな本機種。しかしながら、「自分でカメラをあやつりたい」という欲望を満たすのであれば、こちらのほうが向いているかもしれません。
てはじめに、表参道の路地裏をうろついてみました。自分でカメラをどうにかしたい、しかしながら手軽さを捨てられない私たちにとって、「オートでサッと撮れる」というのは非常に魅力的です。X70には、簡単にオートに切り替えられるレバーが搭載されているので、どのようなシチュエーションにおいても気軽に撮影できます。
ですので、このように気になるお店を見つけたときに、サッと撮ることができます。店内に所狭しと置かれた革製品、温かみのある雰囲気がよく写っていると思います。
都会では、こういった壁面アートに出くわすことは多々ありますが、それを見たままに写すことができるのは、魅力的ですね。APS-Cサイズの大型センサーに28mm F2.8レンズという組み合わせは、私たちが見慣れたスマートフォンと同等の画角で高画質ということになるので、ステップアップをはかるビギナーには、非常にわかりやすいといえるでしょう。
屋外はもちろん、室内も。螺旋状のスロープと、その中心に落とされた光の陰影が美しいですね。
大型センサーなので、夕暮れ時でも恐れずシャッターを切りましょう。ただ、手ぶれ補正はないのでそこはあなたの腕次第です。私はまだまだですね。
ワクワクするような雑貨が目白押しのショップ。クラシッククロームのフィルムシミュレーションでは派手すぎないトーンで、感じたままに残せます。
―X70のさらなる可能性を試したい。その熱が冷めないうちにわたしは、夜に反対方向の列車に乗って鬼怒川へ行くことにしました。
静まりかえった最終列車。その非日常的な、取り残された寂しささえも、写せているような気がします。
薄暗い環境でもこの写り。信頼できる旅の相棒とは、X70のことです。
明けて昼下がりの鬼怒川温泉。相変わらず曇天なのは、私のせいかもしれませんが。見たことあるようなこの構図。曇天の空と両岸の深緑のトーンを同時に写すのは、簡単そうに見えて実は難しいものです。そういうときに露出のダイヤルをいじって、あれこれ試すのは素人ながらに楽しいものです。
旅先の列車というのは、どうしてこうも旅情を感じさせるのでしょうか。窓の外のぼんやりとした感じが、よりいっそう気分を高めます。
鬼怒川から足を伸ばして龍王峡へ。自然の中にある社の雰囲気が伝わってきませんか?
橋の上から見下ろすアングル。こういうときに、チルト液晶は活躍してくれますね。
さて、このX70。28mm F2.8単焦点レンズという光学ズームができない、初心者にはとっつきにくい構成となっています。しかしながら、そこはデジタルテレコンバーターという機能で補完できます。
上から、28mm/35mm/50mmです。このように、同じ立ち位置からでもフレーミングはかなり変わってきます。デジタル処理なので光学ズームにはかなわないですが、これさえあれば風景からポートレートまでこれ一台で賄えそうです。むしろ、初心者には固定の画角で感覚がつかみやすいと思います。
また、最短撮影距離は10cmですから、テーブルフォトも切り替え無しで簡単に撮れます。アフォガートは罪の味ですね。
では、最後にX70の醍醐味、「フィルムシミュレーション」で遊んでみましょう。モノクロやセピアはもちろん、フジ往年のフィルムを再現したフィルターをかけられるのは、とても創作意欲を掻き立てられますね。
ジオラマですが、モノクロの質感と相まって実物を眺めているかのようです。
にぎやかな広場は、ビビッドな Velvia(ベルビア)で。活気が伝わってくるようです。(模型ですが)
誤解を恐れず言えば、X70は単焦点・手ぶれ補正なしと、初心者には勧めづらい機種です。しかしながら、直感的に操作できるダイヤルや、機能を割り当てできる豊富なファンクションボタンなど、ある程度知識がついたユーザーであれば、まさに「かゆいところに手が届く」という感じのカメラです。こう、直にカメラの画質を弄る感覚というのは、非常に大切で、腕を磨くのにはX70は最適であると感じました。しかしながら、すぐさまオートに切り替えられ、なおかつコンパクトなボディ、これはスナップシューターとしても実力十分ですし、フィルムシミュレーションは画作りの楽しさを教えてくれます。他にも、シェア機能やチルト液晶など、昨今のトレンドをおさえたところは扱いやすさに寄与しています。そういう、バランスのいいところが、クラシカルなボディに詰め込まれているというのは非常に魅力的だと思うのです。ステップアップしたいカメラユーザーの相棒に。
あなたの希望にきっと応えてくれます、X70なら。
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